公営斎場の多くが交通の利便性の良くない場所にある理由

生活に不可欠なサービスは自治体によって賄われている

都市にはさまざまな機能を持った建物が並んでいます。住宅や商業ビル、工場などの民間によって建てられる建物もあれば、警察署や消防署、ごみの焼却施設など公的に建てられる建物もあります。
個人として必要な建物や私企業として営利を目的にしている建物は個人や民間企業に建設されています。一方、生活に本当に不可欠なサービスは民間で建設されてしまうと必要なときに利用できないため誰にでも利用できるよう公共の施設として建設されます。
たとえばごみの回収・焼却を行う施設は公営の施設であることがほとんどです。もしゴミ処理施設がすべて民間の業者に作られていた場合、住民がゴミの処理ができず町中がゴミに溢れてしまい景観や公衆衛生の面で問題が発生する可能性があります。そのため生活に必要不可欠なものは公共のサービスとして施設が建設・運営されているのです。

死に関連する施設は好まれない傾向にある

建物の中には嫌悪施設と呼ばれるものがあります。民間施設ならばパチンコ店や風俗店など、公共の施設なら前述のごみ処理施設などがそれに当たります。嫌悪施設は周辺の住民にとってできればあってほしくない施設のことです。多くの場合はその施設があることによって治安や環境の悪化が起こる施設です。また、住民の感情に対してあまり好ましくない影響を及ぼす施設も嫌悪施設に含まれます。そうした意味ではお墓なども嫌悪施設のひとつと言えるでしょう。

公営斎場と民営斎場の違い

そんな嫌悪施設の中でも民間のものと公営のものがある施設があります。それは斎場です。斎場は葬儀に関する施設ですが、民間のものと公営のものでは若干意味合いが異なります。
民間のものの場合、そのほとんどが葬儀のみを行う施設です。霊柩車が常々通ることや不特定多数の喪服を着た人を見かけることになるという点はありますが、騒音や悪臭などの環境面での影響は少ないでしょう。
一方公営の斎場は多くの場合火葬施設を併設します。むしろ火葬施設のみの斎場も多く、「火葬施設のみ」または「火葬施設と葬儀式場」という施設の作りになっています。火葬施設は古いものは高い煙突があり、大気汚染や悪臭など周囲の環境に影響を及ぼす施設でした。しかし、比較的最近建てられたものについては建物や炉の技術の向上などから環境に関してはそこまでの影響を及ぼすことはありません。しかし、多くの新設の葬儀式場は郊外に建てられることがほとんどです。

公営斎場は周辺住民への感情とその機能面から郊外に建設されることが多い

その理由のひとつとして最近の公営斎場は大型化している傾向があることが挙げられます。火葬炉の少ない小型の公営斎場は経年により建て替える際には、別の場所に大型の斎場を建設することが多くあります。現在公営斎場の数は減少傾向にありますが、火葬炉の数は斎場の数ほど減少していません。それは火葬炉の機能が改善されたことがあります。
また斎場が火葬施設としての機能だけでなく、その他の機能も含めた総合的な葬儀関連の施設になっていることもあります。火葬だけでなく葬儀やその他の業務も斎場で行うようになっているのです。そうしたなか、公営斎場の大型化は進みつつあります。
結果として大きな用地が必要になり周辺の住民に影響を与えることの少ない場所が選ばれるようになっているのです。
斎場は現在のわたしたちの習慣では欠かすことのできないものです。しかし公営斎場が利便性の良くない場所に建設されているのにはそうした事情があるのです。