日本で最も民営の火葬施設が多い東京23区

伝染病対策から広がった火葬施設

現在の日本の火葬率は非常に高く99%以上を占めています。よほど特別な理由がなければ火葬で供養するというのが現在の日本の慣習となっています。
その背景には明治時代以降の伝染病に対する取り組みが深く関係しており、公衆衛生を整えるために公営斎場が完備され、公営斎場の完備によって火葬率が高まっていったのです。

日本の火葬施設の傾向

日本の火葬施設のほとんどは公営斎場です。全体の傾向としては火葬炉が少ない火葬式場が統合され公営斎場全体の数は縮小傾向にあるものの、火葬炉としての数は横ばいの傾向にあります。死亡者数が増加している自治体や火葬炉が老朽化している自治体では新しく大型の公営斎場が建設されることもしばしばあります。
また、大型の公営斎場の場合、火葬施設だけでなく葬儀を執り行うことができる式場が併設されていることが多くあります。

他地域とは異なる特色を持つ東京23区の事情

しかし、こうした全国的な公営斎場の事情とは少し異なる傾向にある地域があります。それは東京23区です。
東京23区の人口は2021年5月現在962万人を超えており、面積約628平方キロメートルの中に非常に多くの人が生活しています。しかし、その多くの人口に対して23区内の公営斎場は瑞江葬儀書と臨海斎場の二箇所しかありません。
瑞江葬儀場は火葬炉を20有する公営斎場ですが、葬儀式場の併設はされておらず火葬だけを執り行う施設です。
一方、臨海斎場は火葬炉10炉(うち大型の火葬炉が2)と火葬炉の数は瑞江斎場の半分ですが葬儀式場があり、葬儀を執り行うことができます。

埼葛斎場と比較した対応範囲

埼玉県東部にある埼葛斎場の場合、対応地域は春日部市・白岡市・蓮田市・杉戸町。人口の合計は約39万人で面積は約150平方キロメートルです。人口密度で比較した場合、23区は約6倍の人が住んでいることになります。
埼葛斎場の火葬炉の数は8炉。人口を火葬炉の数で割った場合、東京23区は埼葛斎場の関連地域の6.6倍、人口密度を火葬炉で割った場合には東京23区は1.56倍になります。
こうして比較してみた場合、東京23区の公営斎場は人口や人口密度に対s手非常に少ないことがわかります。
また、臨海斎場は23区のうち、港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区にしか対応していません。

民間の火葬施設が多く敷地を新たに設けることが難しかった

東京23区内の火葬施設は他の地域と異なり、民間の火葬場が非常に多くあります。施設数7、火葬炉の数は76です。
この火葬炉の数を公営の火葬炉に加えて計算した場合、人口での比率は埼葛斎場の関連地域の1.87倍までに下がります。また人口密度に対して計算した場合0.44と埼葛斎場の半分以下になります。
その背景には東京23区は早くから都市化が進み、自治体などが火葬施設を設置する用地が確保できなかったことや民間の火葬炉を用いての火葬で十分に対応が可能であったことから公営の火葬場の新設の必要性が低かったということがあります。