なぜ葬儀専用の式場で葬儀を行うようになったのか

1980年代ごろから広がり始めた葬儀専用の式場

現在では斎場で葬儀を執り行うのが一般的になっています。以前はよく見られた、公民館や地域の集会場、コミュニティセンターなどの地域の施設で葬儀を執り行うというのは珍しくなりつつあります。また、戸建ての家で葬儀を行うということも稀になってきました。
現在のように利用しやすい場所に斎場があるというのはひとえに葬儀業者や貸しホール業を行っている業者が駅前や郊外の交通の便が良い場所に葬儀式場を次々と建設したという事実があります。
もちろん斎場の建設にあたっては、その用地を確保しなければなりません。また建物に関しても建設費用が必要です。斎場で葬儀を行うのが一般的ではなかったころからサービスの一環として斎場を作り、多くの葬儀業者の努力があって現在のように葬儀を葬儀専用の式場で行うのが当たり前という状況ができたのです。

自宅やコミュニティセンターで葬儀を行う問題点

自宅もしくはコミュニティセンターなどの施設で葬儀を執り行っていたときには、多くの苦労などがありました。最も大きいのは周囲への影響です。
葬儀というのはその儀式の特性上日中だけでなく、夜にも行うことがあります。もともと通夜というのはその名称通り、夜を通して行うものであり、また告別式の前身である葬列も日が出ている間に行ってはいけないという決まりがありました。葬儀に関することは死に関連づいたものであり、忌むべきものとして日中に大っぴらに行うものではなかったのです。
通夜を行なえば当然、夜に自宅に人が集まることになります。しかたがないことと言えばしかたがないことではありますが、地域としての結びつきが少ない地域ではそうした夜間の行動が周辺への迷惑と捉えられることもあります。
また、日常空間へ死というものを持ち込むことがはばかられる可能性もあります。普段さまざまな行事で利用されるコミュニティセンターを葬儀で使うことや、自分の隣家に葬儀を行うことを好ましく思わない人も少なからずいるでしょう。
かつては地域で行っていた葬儀というものが個人のものになったことによって、今までは承認されていたものが、承認されないという状況になったのです。

間に葬儀業者が入ることで安心して葬儀を行えるように

そこで有効な手段として現れたのが葬儀専用の式場です。葬儀専門の場所である以上、そこで他のことをすることはないため、葬儀場はひとつの日常とは乖離したスペースとなったのです。また企業という経済活動をそこに挟むことによって、個人間での感情的な対立が発生しないというものひとつの利点でした。斎場がそこに存在することは、その周辺の住民と斎場を建設した業者の二者間での関係であり、そこで葬儀を執り行う人はその関係性の中には決して巻き込まれうることはないのです。

現在では葬儀専用の式場で葬儀を行うのが最も一般的に

このように、時代の変化に対応した斎場は多くの日本人に受け入れられました。現在ではそうした民営の斎場だけでなく、公的な施設としての公営斎場も多くあります。
葬儀を行う場所は時代によって大きく変化してきました。そこにはその場所で行うのが合理的な理由があり、その結果として多くの人に斎場というものが受け入れられているのです。