通夜式を行わない一日葬が少しずつ増えているのは

もともとの形とは大きな変化を遂げた通夜式

葬儀を行う際に告別式とほぼ同じように行われる通夜。現在ではこれは当たり前の風景ですが、もともとは全く違う形の儀式として行われていました。
通夜は平服で参加するものであり、読経を行う宗教者も黒衣の服装で葬儀に特化した服装ではありませんでした。
通夜の本来の役割は故人が亡くなってからその事実を受け入れるまでの期間に行う仮の儀式だったのです。
通夜式は日常の延長であり、葬儀だからとかしこまって出ていく場所ではありませんでした。式を執り行う側だけで行うものであり、式に出席する側の人間は葬儀の後に行う告別式に出席するのが当たり前だったのです。

通夜式は告別式を含んだものへと変化

ここに大きな変化を起こしたのが高度経済成長期です。一般の方の葬儀でも200人以上が出席するのが当たり前だったこの時代、参列者の利便性を考えて「通夜」と「葬儀・告別式」という葬儀の構成が、「通夜・告別式」と「葬儀・告別式」へと変化していったのです。
その背景には昼に行われる「葬儀・告別式」よりも夜に行われる「通夜・告別式」の方が人が集まりやすかったという実情があります。

現在では葬儀は告別式とほぼ変わらないものに

こうして変化していった通夜は現在では告別式とほぼ変わらないものとなり、通夜と告別式というそっくりな儀式が2回行われるようになったのです。
時間的に出席しやすいという理由や親戚だけで行われる葬儀が直前に行われるため出席するタイミングが難しいということから現在では多くの人が通夜式にのみ出席しているというのが現状です。

通夜式を省略した新しい形も

また、最近では通夜式を行わない一日葬も行われるようになってきました。その背景にはそもそも弔問客が来ない家族葬形式の葬儀が主流になりつつあることや葬儀後の告別式とほぼ同じであるのなら通夜ごと省略しようという方が多くなっていることがあります。
葬儀の価格は安くなっていると一般的に言われていますが、全体の傾向として遺族が直接的に負担する金額は大きくなっているのが現状です。
家族葬で葬儀を行う場合、弔問客からの香典はありません。そのため葬儀業者に支払う金額が少なくなっていたとしても遺族が直接支出する金額は多くなっているのです。そうしたなかできるだけ遺族が金銭的な負担を少なくするために通夜式が省略された葬儀が行われつつあるのです。