時代ごとに変わっていく葬儀は隆盛を繰り返す

安定して景気の良い時代には少しずつ華美になっていく傾向に

現在の葬儀のように庶民であっても宗教者に依頼して葬儀を行うようになったのはおそらく江戸時代のことです。江戸幕府によって行われた宗教政策によって葬儀を行うのは仏教寺院とされました。
だれもが葬儀を行うようになって葬儀の形式は変化していきました。現在ではほとんど行うことはありませんが、葬儀を行った後に墓所まで棺を運ぶ葬列というものがかつてありました。
葬列は葬儀を行った後で故人が亡くなったことを周辺に知らせる儀式でした。
葬列はその家の格を示すものとされ、葬儀はどんどんと華美なものになっていったのです。

華美になりすぎた葬列は告別式にとって代わられた

全盛期の葬列には近親者や家族だけでなく、葬列専用の業者も参列していました。家が裕福であることを示すために、医師や看護師に扮した専門業者が葬列に参加したという記録もあります。
こうした葬列というのは非常に費用の掛かるものであり、2年以内に葬儀を2回行うと家が傾くとまで言われていました。そこでこうした華美な葬列を止め、代わりに葬儀のあとに告別式が行われるようになったのです。こうした流れは大正期から戦後まで続きました。

現在のような葬儀の形が定着したのは1970年代ごろ

時代は変わり、葬列がほとんど行われなくなりました。1970年代に入ると再び葬儀は華美な方向に変化していきます。葬列は行われなくなりましたが、お通夜や告別式が華美になっていったのです。葬儀は大規模に行うものであり、できるだけ多くの人に来てもらうのが良いという風潮がありました。やがて2000年代に入り葬儀は再び縮小傾向になります。
その背景には日本の経済状況の変化や生活習慣の変化があります。葬儀の役割は他者に示すものから遺族の悲しみをいやすものに主とした役割が変化していったのです。

現在一般的に行われているのは家族葬形式

現在では多くの葬儀は家族葬形式で行われています。家族葬で葬儀を行うことによって、葬儀の費用が抑えられることやあらかじめ決められた人だけが参列することで葬儀をより簡潔に行うことができるようになったのです。
葬儀の形式は時代が指し示すように、簡素から華美へ、そしてある程度期間が経過すると新しいシステムに代わり簡素化する傾向にあります。今後、家族葬形式の葬儀も時代が経過することによって華美な葬儀に変わっていく可能性もあります。
変わらないことは葬儀は故人を偲ぶために行うものである、ということです。自身が葬儀を執り行う際には何を重視してどう葬儀を進めていくのかということをはっきりさせておくことです。